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マスタリング画面

今日の出来事で一つメモをしておこうと思います。

うちに入ってきたアシスタント2人ですが、既にプロ活動のレベルにある人材を入れたので、どれほどに勉強を共にすることがあるのかは測りかねていました。結局2人ともマスタリング勉強会を開き、マスタリングそのものというよりは、音の感性をよりつぶさに学んでいくというスタイルをとっています。そうした中で、彼らから発せられる言葉としては、

『マスタリングは日本で学ぶことは出来ないと諦めていた』

ですとか、

『感性というものを勉強する機会がなかった』

という発言が目立ちます。これは正に現在の国内の状況を表しており、ロジカルな形でスタジオワークを世界最先端の考え方、ノウハウを用いて教えることのできる機関はほぼ皆無と言ってよいかと思います。もしあるのだとすれば、世界の中での活動でもその存在というものは聞こえてきますし、優秀な人材というものも既に出てきていたことでしょう。しかし、世界の舞台では殆ど日本というものの存在は語られることはなく、僕が孤軍奮闘しているような状況であることは違いありません。そういう中で感じる課題としては、今後どういう形をとって理論的かつ柔軟な姿勢で、マスタリングを教える施設を作っていくか・・・という難題を考え始めています。世界で行われている音作りとは、全く異なるベクトルにある国内の状況を考えたとき、本格的な教育施設というものは必要だと考えています。これは閉鎖的であった国内の音楽制作全体が、今後はグローバル化によって大きく変貌を遂げるときに、音自体がグローバルスタンダードへと準拠する必要があり、そうしたニーズにこたえる人材というものが不足することは十分にあり得ます。

今のアシスタントたちが育ち、しっかりと歩みをしていき実績も十分に兼ね備えられた時には、スクールという形でマスタリングをはじめとするスタジオワーク全体を学ぶ設備を整えたいとも考え始めました。初心者からプロまでを受け入れる態勢を整えて、初心者はプラグインで、プロはハードギアをふんだんに扱えるようなスクールにしたいとも思っています。

スクールと言えばDAWの中のみで完結させるイメージがありますが、どうせだったらハードギアを次々に扱える設備を持っていれば、より高度な音楽制作の伝授が可能になります。色々と考えられることはありますが、僕がバークリー音大でマスタリングを習った折のように、スーパースターから指導を論理的に受けられるような仕組みにしたいと思います。

  • 2019年2月3日
  • 読了時間: 4分
マスタリングEQ IGS Rubberband

IGS AudioのRubberbandが修理から帰ってきて、フルチューニングされたIGSは本当に素晴らしいスキルを発揮しています。アシスタントたちのところにも、同じくこのRubberbandが導入され、それぞれに思うところがあるようです。確かにこのPutec EQというものは、挙動がパラメトリックとは全く異なるのと、他メーカーと一線を画すIGSならではの強烈な個性とサウンドに、

『じゃじゃ馬』

『難しい』

という声が聞かれますが、それほどに可能性の高い濃い口の機材ですので、マスタリングに与える影響というものも相当なものになります。そもそもこの機材は、api500シリーズのフォーマットでリリースされており、マスタリングにはヘッドルームを含め『向いているのか?』という疑問も起こりそうですが、それはマスタリングのどのチェインに含むのかで、扱いは相当に変化するのかと思います。勿論ダイナミックレンジやステレオイメージが広くなる、チェイン後半に差し込むことは似合わない機材でしょうし、ここまでの濃い口というものを纏め役として用いることも考えにくいものです。やはりapi500のフォーマットで作られていることと、ヘッドルームの許容範囲から考えれば、より入口に近いところで用いられることを前提としていることは間違いなく、加えてこの機材の場合はマスタリング全体に与える影響の大きさからすれば、少し混ぜるということを前提としてはおらず、『使いか使わないか』という選択肢に限定されるイメージを持ちます。

特に低音での挙動というものは非常に激しく濃厚で、80年代や90年代のリマスタリングを求められるような場合には非常に有用です。マスタリングで音自体を弄って行く概念がなかった時代の楽曲では、マスターにコンプレッサーやEQなどを少し噛ませるくらいの音調整ですし、昔のオーディオ環境を前提とした音作りをしているので、洋楽であっても低音も高音もレンジ幅がほとんどなく、中域の厚みもありません。更にM/Sの概念もあまりなかったことから、ステレオイメージもかなり狭いものがあります。こうした昔の楽曲をリマスタリングする場合、最も難しいのが中低音の扱いで、強引にBoostしようとしても上がってくるものではありません。またBoostできたとしても、今度は荒々しい音色や飽和状態に陥るために、必ず中低音を整えるためのCutが必要になります。その意味では、独特のカーブを描き出すAttenateの存在は非常に素晴らしく、特にIGSの場合は何とも言えない静けさを演出してくれるところがあります。

その昔、自分のCDを自らでプロデュースした折、あるリファレンスの楽曲に近付けたくて頑張りましたが、どうにもこうにも行き着けない境地がありました。これは結果的に、今となればAttenateの存在があったわけで、当時はプラグインを山程使って楽曲を仕上げていましたのでそれなりの知識というものはありましたが、現在のように実機が発する音を熟知していての制作ではありませんでしたから、ある意味勘任せのようなところがありました。更にはミキシングとマスタリングの違いというものも、今のように明確にわかっている状況ではなかったので、やはりどうしても釈然としないような音で着地するしかありませんでした。

そんな経験からしても、現在のマスタリングEQというものに対しては、明確に『こういう働きをしてもらおう』という目的をもって接しています。特に味の濃い機材に関しては、EQカーブや理論をいくら勉強したとしても、余りに強烈な個性を発するがゆえに、結局の所自らのスキルを上げていくしか方法がないというのが現状です。そのスキルというのは、知識のたぐいではなくあくまで実体験、更には楽曲を通しての音楽表現の能力であり、自らの考える音楽の一部に機材が溶け込んでいかない限りは、必ず壁にぶつかります。特に僕が欧米のマスタリングと違いを明確化するために名付けている『EQマスタリング』においては、音楽表現そのものをマスタリングエンジニアが司るという考え方のもとに行うので、何度も何度も繰り返しのトレーニングが必要になることは間違いありません。実際に僕自身が、EQマスタリングにおいては音の聴き間違いや、楽曲構成の勘違いを起こし、たくさんのミスをしてきたこともありますし、原曲が持っている音色感に引っ張られすぎてしまい、本来行き着かなければならない音に届かないということも沢山経験しました。それら経験が今現在の形となり、ヨーロッパでアワードを取れる所まで来たわけですが、それまでの経験としては燦々たる結果というものを何度も体験しました。それほどに現代のマスタリングは芸術的になっており、少し勉強すれば何とかなるという部類のものではなくなっていますし、そもそもの才能というものも大いに求められる仕事になっていることは間違いありません。

そんな特異な存在になりつつある欧米のマスタリングにおいて、スタイリッシュな音を作れるソリューションの一つが、間違いなくIGS AudioのRubberbandと言えるでしょう。今後も更にこの機材への理解を深めていくのと同時に、様々な楽曲で活躍してくれることは間違いないかと思います。

  • 2019年2月3日
  • 読了時間: 1分
ミキシング画面

64chのAD/DAコンバーターを準備し、シグナルの行き来に自由度が増しました。余裕のあるシグナルチェインというもので、本日はじめて本格的にミキシングができました。サンディエゴのスタジオからの発注で、典型的な西海岸の音で作られているうえに、かなりマイクの本数が多く用いられていたので、それなりに手古摺ることも考えられたのですが、やはり余裕のチェインは非常にキメの細かい設定ができるがゆえに、完成度が圧倒的に上がりました。

今まで『こうしたい』という音があったとしても、どうにも行き付けない境地というものがあり、それが何なのかをかなり長い間模索していましたが、遂に本日その見えていた景色というものを自分のものにできました。

余裕があればこそのハードギアの組み込みも行え、更に考えることのできる音作りは可能になります。これからも楽しみです。

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