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  • 執筆者の写真Furuya Hirotoshi

成長し続けるピアノ技術とその感性を考える

グランドピアノ

スタジオワークの音作りは、エンジニア側の能力に全面的に依存するところがありますが、ピアノの調整というものは、その楽器自体が成長を続ける為に、正しい形でその方向性を指し示すという要素も持ち合わせています。レコーディングやミキシング・マスタリングなどは、音を操る意味での自由度があまりに広く、楽曲の仕上がりそのものは極端な言い回しをすれば如何ようにでも作り上げられてしまいます。勿論限界点もありますが、多くの場合はかなりの作り込みというものが可能です。一方ピアノは、ピアノとしての音色というカテゴリから外れることはなく、一定の路線から大きく外れることは許されません。しかし、その成長の過程から織り成される、独特の音色の変化というものがあり、その変化を上手く捉え、そして将来の成長を見越して音作りを構築していきます。 アコースティック楽器という特性から、余計に楽器そのものに音色の方向感が依存することとなりますが、その構築を行う際には、音の価値感を構成する強力な哲学を調整する側が持ち合わせている必要があります。ここの部分を、どうも日本人が苦手としていると言うか、欧米で作られる音と異なる根本原因となっている気がします。兎に角数値やピッチが正しいことを善とし、音の創造的領域に侵入することを嫌がる傾向があるように見受けられます。音を重視すると言っても、その重視する方向感が欧米の音にきちんと向いているか否かも重要です。この箇所は現地で、そして絶え間なく西洋音楽の根底に振れている必要があるので、中々日本でその環境を手に入れるのは難しいかもしれません。 最も分かりやすい例としては、西洋人のエンジニアと日本人のエンジニアがミキシングした(別案件)音源を受け取り、マスタリングを施す経験が、自分にとってはその違いを最も感じる瞬間でした。現在のスタジオワークは、オンラインで世界中とつながっているがゆえに、チャンスさえつかめれば世界的な仕事を得ることが可能です。昨日は、ガンズ・アンド・ローゼズのマスタリングエンジニア、Maorと繋がり仲良くなったりと、世界の檜舞台でやり取りすることも可能です。 一方ピアノの場合は、ハードコンテンツとしてのピアノが兎に角大型という点からして、中々グローバル展開というものが難しい感があります。しかし、長期に渡り永続的な付き合いを欧米と行っていれば、必ずその異なる感性というものを感じ取れる瞬間が来るはずです。僕はその感性を信じて、音で繋がった世界とのリレーションシップを重要視してきました。 ピアノは約100年ほど新しい考え方が出てきていないところもあり、保守的に成りながら更には風通しが良くないことも後押しし、進化や新たな試みというものが出てこないように思えます。一方スタジオは、毎シーズンごとに新しい機材が発表され、音のトレンドは常に変わり続けます。外部から入ってくる価値を学ぶこともあれば、自分が世界の舞台で新たに発想する音もあり、世界をリードすることも可能です。ピアノは、この辺りがどうも刺激が弱い産業に思えます。スタジオワーク並みの、アグレッシブな新たな試みがあってもよいのかもしれないと、双方にスキルを磨いてきた人間としては感じるところがあります。 ピアノ自体が成長し続けるのであれば、自らの成長もアグレッシブに上げていく必要性があるのではないでしょうか。

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