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  • 執筆者の写真Furuya Hirotoshi

マスタリングスタジオとして最初のゴール

マスタリングスタジオ

今や国際的なマスタリングスタジオとして立脚することで、世界中のクライアントたちにサービスを展開している。


今のマスタリングスタジオを作り、2年半が経過しました。僕が最初に目指したのは、海外で経験したアグレッシブなスタジオワークを日本に持ち帰ることでした。バークリー音大で、ジョナサン・ワイナーやマーク・エインスティマンに師事して、『マスタリングの考え方』を学びましたが、それはあくまで大学という枠内での経験。正直なところ、今役立っているかと聞かれれば、習ったものはほぼ何も使っていません。ただ、ポール・マッカートニーやマイケル・ジャクソン、ピンクフロイドなどを手掛けたスター教授に師事できたことで、自分の中にはワールドワイドで一流の仕事をすることを責務として考える基盤が出来たかと思います。

そして欧米のスタジオに出入りし、その後国内の音楽市場を見ると、著しく異なる様々な事情というものを見るに至りました。僕の中には、

『これでは、完全に世界から取り残される』

と強く感じたのを覚えています。そして日本という国から、世界へ向けてミキシング・マスタリングのサービスを展開するスタジオ運営を決意したのが3年ほど前でした。それまでも来日アーティストたちの仕事は多数こなしていたので、世界に向けて実績は前段階としてある状況でした。ビリー・ジョエルやエリック・クラプトン、ウィーン・フィルやベルリン・フィルの来日公演に携わっていたのは、世界に向けてプロフィールを形成するには何よりもの材料になったことは間違いありません。それでも世界の壁は厚く、様々な試みをしてもそう容易く仕事が流れてくるようなことはありませんでした。


最初に少し大きめの仕事が来たのが、ハリウッド経由で入ってきた韓国の仕事でした。テレビドラマの主題歌をマスタリングするというものでしたが、遂に最初のチャンスが来たと思いそれはそれは思いを入れて仕事をしました。2回ほどのリテイクを重ねてクライアントから称賛の声を貰うことが出来、随分と自信になったことを覚えています。

その後はヒット曲にも恵まれるようになり、欧米での知名度が上がっていくことで仕事はさらに増えました。そしてドームやアリーナツアーで来日してくるアーティストたちが、うちのスタジオに立ち寄り新曲のマスタリングをしたり、更に彼らの紹介で更にスーパースターたちと仕事をする機会にも恵まれました。気が付けば、国際エンドーサーの契約数は9社に上るようになり、本国のサイトやFacebookページ、Instagramにも頻繁に取り上げてもらえるようになり、更に世界からこのスタジオを知ってもらうきっかけを得ることが出来ています。

最初に持った危機感、それは世界からの立ち遅れであると共に、音楽という最新のトレンドを意識する仕事であるにもかかわらず、世界の潮流からは大きくベクトルの違う日本の現状を僕自身が明確に説明できなければならないという義務感もありました。それには国内では不可能と思える圧倒的な実績を積み上げることが急務でしたし、世界とのリレーションというものをスタジオ自体が体現する必要も大いにありました。また、ヒット曲が生まれエンドーサーとしてメーカー側が世界に向けて公言し始めると、世界中のスタジオが僕に興味を持ってくれるようになりました。前の記事でも書きましたが、欧米人との付き合い方というものには、日本人が思っている以上のハードルがあります。それは、明確なスキルがない限りは、付き合おうとしない彼らの価値観を前提として、世界から注目されるスタジオとしてどう立脚するのか?というものでした。

幸い考案したアイディアや機材の考え方、また音の作り方が欧米の心を掴みました。常に斬新でありクレイジーであり、そして世界を驚かせ牽引することをメーカーと共に考え続けました。そして大きな結果をいくつも出すに至り、世界の歩調と完全にマッチングできた感激の瞬間というものも覚えています。

世界に出て仕事を取ることが急務ではありましたが、それは同時に世界と激しく競争するという意味であり、当初はそこまでの目線を持ち合わせていませんでしたが、自分自身が何処の国の出身者という考え方を持つこと自体がナンセンスな状況ともいえるほどに、正に全世界を相手にアグレッシブな競争とクライアントからの要望に日々応える状況を作り出せました。

ここまで来るのには大変な苦労もありましたが、まず3年前に志した『世界的な音楽プロダクションとして立脚する』という当初の目標、そして世界中のクライアント並びにメーカーをはじめとする関係者たちとの、強力なリレーションシップを形成するという目標も達成できたかと思います。まず第一段階として、当初掲げたマスタリングスタジオとしての形は形成されました。国内のクライアントからも、随分と当スタジオに興味を持ってもらえるようになり、市場が動いていることを感じ取ることが出来ます。ハーバード・ビジネス・スクールで学んだ、

Willing to pay

の理論に照らし合わせて、値段は自分が望むよりも随分と安く抑えています。しかし、日本の市場に世界で戦う音楽プロダクションのノウハウを提供するのであれば、まだまだ知名度としては低いこと考えれると、当然の設定と言えますし、

『世界レベルでは、こういうことが出来るんだ』

という認識自体が国内にないことを考えると、まずその共通認識を共有化するところから始めるしかないと考えています。今まで構築してきた強力な哲学と信念は、更にアグレッシブな形で競争するスタジオ形成には打って付と言える環境を生み出しています。オーストリアやドイツ、ベルギーなどのエンジニアたちが当スタジオで働きたいという意向を出してくるなど、ワールドワイドなスタジオとしての動きというものはさらに加速していくことが見込まれています。

こうしたグローバルという場でアグレッシブに競争できる感性と技術力を有し、開かれたマスタリングスタジオを目指してきましたが、当初の目標は完全に達成できたと言えるでしょう。今後必要なプロセスとしては、更に深度を掘り下げ世界中の優秀な人材を集め、世界で最も垢抜けたスタジオ運営を可能とするシステムを作り上げることが急務であると感じています。既に欧米でも雇用が始まっている中、可能性は正に無限大であることを考えると、それを最大化させることが僕の使命であると感じています。

国際的なマスタリングスタジオとして、一つ完成型を作れたことは何よりもの喜びです。これに甘んじることなく、更にエンドーサーとして機材の充実と理解度をも深めていきたいと考えています。

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