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執筆者の写真Furuya Hirotoshi

音は深化し続ける。人間の感性がどう追い付くか?

スタインウェイピアノ

ピアノもスタジオ機材も、そして自らのミキシング・マスタリング、調律も全て進化し続けます。いや、深化と表現したほうが良いかもしれない考え方も存在します。それは、メーカーサイドによってもたらされる作る技術や新しい概念に対しての進化ではなく、数年単位で楽器や機材を育て上げることを前提とした進化です。特に良い素材を持ち合わせている楽器や機材は、その性能や放つ音色というものは想像を超えるような進化をとげることがよくあります。これは、ホールにおいてあるピアノや、何時も出入りしているスタジオでは決して感じることのない感性で、手元に置き、日々触り、よく対話することで感じ取れるものです。 そして深化という考え方は、これら楽器や機材が発する進化の過程の音を感じ取り、常に自らの聴く力と考える力を養い、その上で感性を存分に育てることで得られる、人間自らの深い洞察力に依存した成長の過程でもあると考えられます。 この考え方は、おそらく現在の日本には余り浸透していないかもしれませんが、より高度な音色の構成や、大きなレベルアップを図るときには決して避けて通ることの出来ない課程のはずです。つまりは、楽器や機材の進化を認めることができ、その進化を感じ取った上で自らを養い、鍛え上げ、そして昇華させていく概念を持つことこそが、深化の過程といえるのではないかと今のところ思っています。 この課程を忘れた時に、探究心は止まり、楽器や機材の進化を感じることが出来ずに、深化する目線も失われるのだと思います。若しくは、そもそもそういった考え方自体を持ち合わせていないケースも有り、根本的に考え方を覆さなければならないこともあります。 しかし、このベクトルを持った思考法は、正に音の深化という領域に達することが出来るといえます。相互の進化が深化を支え、音の新天地・領域へと踏み込むことが出来ます。感性や才能が多分に必要とされますが、自の感性を存分に伸ばす絶好の機会とも言えます。

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