イギリス・フランスの合同チームから成る楽曲制作において、その一部を日本で受注する。それがまた、ロンドンの敏腕作曲家・プロデューサーであるセフィー・カーメルからの紹介となれば、果たしてそんなことが実現するのだろうか?という疑問が国内から提起されそうです。しかし事実、この1週間はイギリス・フランスの合同チームからの仕事を、プロデューサーとして自分が立ち、アシスタントとして今年から新たに加入してくれた吉井君が打ち込みの担当として対応していました。
今度は受注までできても、その先の納品まで漕ぎ着けるのか?という次の疑問がありますが、まず1つの関門として先方が楽曲に求めているものをプロデューサーが纏めていき、その先にプログラマーが実際のプログラミングを施していくわけですが、ここで技量が大きく左右します。基本的に日本のプログラマーたちというのは、音の線が薄くて細いイメージが有り、更には楽曲内でのいわゆる『徹底した詰め』の甘いケースが殆どで、これが音楽先進国である欧米勢との歴然たる差に繋がっていると感じることが多々あります。また、音質においてもダイナミックレンジと幅がなく、更には磨き抜いた音色というものは感じられない故に、国内で常識とされている打ち込み・音作りでは、確実に先方の高いハードルを超えることはできません。
このハードルを如何に超えるのか?というところが大いにありますが、結果的に吉井君のプログラミング・ミキシングした音源は、イギリス・フランスのチームから大絶賛を得ました。この結果は如何に生み出されたのか?僕は吉井君がうちのスタジオに参加する折に、『必ず一流に育て上げる』という約束をしていました。自分がこれまで経験してきた海外音楽の制作に積極的に携わることで、必ず感性は研ぎ澄まされ世界の舞台でも活躍できることを確信していました。それは彼が音への感受性という意味で、非常に柔軟な姿勢を持ち合わせていたが故に、その可能性というものを感じていました。また、毎週2回マスタリング勉強会を開催し、海外音楽(音楽先進国の音楽)がどのような形で作られ、如何に構成され完成型を見ていくのかを、ともに考える機会を積極的に捉えてもらいました。
結局今回の一件で感じることとしては、電圧でもケーブルの違いでもなく、また機材も極普通に国内にあるものばかりを使用していました。結局のところ一番重要なことは、音を司る感性であり、その感性をどういう環境で育て上げたのか?また、自らに何を必要な要素として吸収し、自らを育て上げたかにほぼ全て依存していることを強く感じました。結果的にその感性を持ってして機材を選んだ際に、海外趣向の強い国内未入荷というものを選択していく可能性はありますが、それは機材に依存しているのではなく選んだのは自らの感覚ですから、あくまでそれは自らの持ち合わせている感性に依存しています。
世界の音楽市場に挑戦する折、グローバル・スタンダードに準拠した感性はカーナビゲーションのようなものだと感じています。いきなり仕事が降ってきて、それが思いもよらないほどの一流からの仕事であったとしても、自らでそれまでに培った
『最低限ここのラインに入れていく』
或いは
『グローバルの中で輝くために、この理想のラインに入れたい』
という感性を身に着けていれば、多少のプレッシャーは帰って良い作品作りにはプラスになる勢いかもしれません。うちのスタジオから、こうした世界的な仕事で称賛を得る仕事をこなす人物が出てくるというのは、これまで教えてきた内容が正しかったこと、そして日本人が世界の舞台できちんとした教育さえ受ければ、十分に音楽先進国でも通用することが証明できたかと思います。これに続く若い世代にとっては、一つの光として受け入れられるでしょうし、欧米の音作りを崇めてきたこれまでの国内の音楽市場にとっては、一つの指標としてこうした人物を参考にできるかと思います。音の感じ方こそが、世界の舞台での成功へとつながることは間違いないでしょう。
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