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執筆者の写真Furuya Hirotoshi

世界の音のトレンド・潮流が大きく変化

SPL Crescendo

音の潮流、世界のトレンドというものは、数年単位で大きく変化します。

このトレンドというものに対して、当スタジオのような国際エンドーサーは非常に敏感です。というのは、まず自分たちが積極的にそのトレンドを生み出しているということ、またそうした潮流が何処で取り入れられ、更には進化を見てどのような形でパブリッシュされるのかを見届けることで、更に次の世代の音というものを創造していきます。そして、昨年SPLからリリースされたCrescendoを導入した折、このマイクプリアンプがプロダクトマネージャーのサーシャとのランチでアイディが生み出されたこと、また音像の大きさというものにスポットが当てられていることを以前述べたかと思います。

そして昨日アメリカから受け取ったミキシング後の音源は、正に大きな流れとして世界のトレンドが変化したものを感じさせるものでした。ボーカルの音像の在り方、ドラム、ギター、シンセサイザー、そして女房役のベースの音までもがあまりに音像が大きく、リアリティに満ちている迫力あるものでした。これは正に日頃の業務で、Crscendoから感じられる音像の大きさと同じ印象を受けると共に、アメリカで制作されているということはデジタルマイクの可能性はあまりなく、またCrescendoが導入されていることも考えにくいことから、恐らくはこちら側が想像している手法とは異なる手段で、その音像の大きさというものを作り出しているのかと思います。

デジタル音源になり40年近い歴史を刻んできている昨今、世界のトレンドはものすごいスピードで進化し続けています。今回確認できた2018年後半における音のトレンドの変化から遡ると、2015年に大きな変化というものが起きています。つまり3年程度でトレンドというものが変わっており、その変化の周期というものは想像以上に早く激しいものがあります。こうした動きに対して、先行してトレンドを引っ張るのがエンドーサー契約を持つSPL社で、マスタリング機材における彼らのアップデートのダイナミック感、並びにスピード、そして濃厚に練り上げられた哲学というものは、他の追随を全く許さないレベルへと到達しています。

ここまで音像が変化すると、使用する機材というものも大きく変化する必要があります。特にボーカルの在り方が更に大きなものとなり、それに調和させる形でバックのバンド音源の緻密さとリアリティいうものも表現させていかないと、楽曲全体としての調和が取れなくなってしまいます。昨日少しマスタリングを触ってみた感じとしては、それぞれの楽器が強力に主張してくる音源を受け止められるのは、強力なヘッドルームを持ち合わせる機材である必要があると感じました。

今後のトレンド・潮流はさらに変化し、進化していくかと思いますが、こうした世界の流れを理解しつつ音源を制作していくのも一つの楽しみであると共に、国際エンドーサーとしての役目を果たしていくという意味では、非常に重要なことだと改めて確認することができた出来事でした。また、この音のトレンドを明確に理解させてくれるのは、Kii Threeスピーカーがあってこそのもので、同じくエンドーサー契約をしている一社となりますが、音を判断するという意味では最も重要な機関の一つであることに間違いありません。

昨今ハイレゾが持て囃されますが、果たしてそのハイレゾ音源の再生能力というものをしっかりと理解してのハイレゾなのか、若しくは大きな制限がある中でのハイレゾなのかで全く景色が変わってしまいます。最新のトレンドを追っていくというのは、根本的な部分は絶対的な形で理解している必要があり、その理解力の上に成り立っている音の判断でなければなりません。モノの良し悪しを判断する折、それが俯瞰的な立ち位置・視点からも整理されている理論であり、しっかりと他人に対して説明のつくものである必要もあるでしょう。アーティストやプロデューサーがジンクスとして感じていることはある意味自由です。水晶をCDプレス機に乗せて焼くと良い音がするだとか、このケーブルは絶対的だと思っていることも自由かと思います。しかしエンジニアというのは、全ての感性においてフラットである必要性が求められる一面があります。それは人の楽曲を扱い、その音源に自らの意見を注入していくため、自らの行き過ぎた哲学ではない信念や信仰に似た感情で音源を扱うべきではありません。もし仮に自らが感じたものとは、全く異なる意見が出た時に、どのように対応するかにおいても応用力が求められます。

そして音のトレンドがドラスティックに変化したとき、その変化に気づき柔軟に受け入れていく姿勢が何と言っても重要で、そしてそのトレンドを追う立場だけでなく作り出す側としてのモチベーションも必要になるのではないかと思います。

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