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執筆者の写真Furuya Hirotoshi

ヨーロッパの音

ステムマスタリング

夜中になりましたが一段落です。 ファイルは送付したので、明日起きた段階でどういう回答が来ているかをチェックし、ファイナルとなるか否かの見極めです。大変ですが、やはりこうした仕事には新たなる境地の開拓や、自らがまだ見たことのない景色というものを感じさせてもらえます。高いハードルを超えるたびに感じることですし、『これで完成』というものが存在しない世界なので、常に新たな発見と見識というものは身に付けさせられます。そして新たなものを得れば、また新たな考え方をする音が出てきますし、僕の側から世界に対してアプローチしたいと思える音を思いついたりと、兎に角休む暇というものを与えてもらえません。息を1つ付けば、直ぐに取り残されてしまう世界なので、第一線で仕事をし続けるのであれば、兎に角走り続けていなければならない世界でもあります。 その走り続けなければならない世界という定義からすると、ヨーロッパメーカーの音作りというものは改めて素晴らしいと再確認させられます。今回の案件でステムマスタリングという手法を用いていますが、各パートごとに振り分けられたセッションをミキシングしながら最終的なマスタリング段まで持ち込むという作業です。この方式は非常に選択肢が広く、こちら側の采配に依存する(信頼されているとも言える)形式を取るので、スキルや使用機材のクォリティが露骨に出るところもあります。そんな中でも、elysiaは最高の仕事をしてきます。本当に素晴らしい。コンプレッサーで太く激しくも、また低音の扱いも存分に楽しませてくれるかと思えば、その下に噛ませているEQも、それはもう現代の音楽に無くてはならないHi-Fiサウンドの典型のような音が直ぐ様作れます。それら作られた音を重ねていき、トータルで纏めるわけですから、重厚かつエレガントでスーパークリーンな最終型を製作可能としてくれることとなります。 こうした音に常に触れることができれば、最先端の思想を基とした基礎的な音作りが可能になるのではないかと思います。ピアノの調律も同じベクトルの上にあると定義しています。膨大な選択肢の中から、緻密に積み上げていくのがスタジオワーク、決められたメソッドの範囲に納めながらも、木質を中心とした天然素材ならではの生命感溢れる音作りがピアノという感じでしょうか。双方に面白い仕事だと感じています。

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