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執筆者の写真Furuya Hirotoshi

ウィーンフィルハーモニー 専属のレコーディングエンジニア – ゲオルグ・ブードセックと共に

ウィーンの中心街から車で15分ほどの、カジノ・バウムガルテンで行われた、ウィーンフィルハーモニーとヨナス・カーフマンのレコーディング


今回の旅も最後となり、ウィーンフィルハーモニーの専属レコーディングエンジニアである、ゲオルグのスタジオを訪問しました。彼は元々ユジャ・ワンのレコーディングを行っている折に、僕の方から声をかけて知り合ったのですが、今回一連のヨーロッパの旅をFacebookに書き込んだところ、一番最初に自らのスタジオに招き入れてる約束をしてくれた友人でもありました。ヨーロッパに到着した折に、最初にコメントをくれたのもゲオルグだったのですが、実際のところ彼のどのスタジオに行けばいいのかは全く知らされないままにウィーンに来ました。

先のコラム記事のハロルドとウィーンの街を歩き、昼食も終わり彼が帰るということでゲオルグからの連絡を待っていると、メッセンジャーへチャリーンと一報が(笑)。随分とフランクですし、僕はウィーンのことは全く知らないのに・・・と思いながらタクシーで現場へ。到着したら、全てが用意されていました。いやー、いきなりなんでウィーンフィルとカーフマンのレコーディングの場にいるのか、訳が分かりませんでした。

レコーディングの場に呼び入れてくれた、ゲオルグと共に愛用のデジタルコンソールの前で


彼の機材を様々に見せてもらいながら、彼のスタンスというものにも非常に惹かれました。ここヨーロッパでいつも感じることですが、一流は一切の隠し事をしません。多少のことを見られても、そう簡単に盗めるものでもないでしょうし、機材を見たところでその先の実際の音まで到達もできていないわけですから、その辺りのことは一切気にしないのかもしれません。そしてオーストリアの人たちは、意外にも英語が物凄く堪能です。彼ら曰く、ドイツのような大国ではないゆえに、海外との取引が沢山ないとやって行けないとのことでした。うちのスタジオに入ることが決まったハロルドも、非ネイティブのイングリッシャーとしては相当ですし、同じくゲオルグもかなり達者です。確かにEU圏内でも、双方母国語が異なる折は完全に英語が国際語として用いられていますが、その中でもレベルは様々なのは確かです。意外と空港職員たちの方があまり会話は得意でないイメージですが、ビジネスで英語を用いている人たちのスキルというのはかなり高いものを感じます。

そういうゲオルグでしたので、コミュニケーションには一切困らなく、すぐに打ち解けることが出来ました。


ゲオルグが担当する、アシュケナージのレコーディング風景です。今回のスタジオとは異なる、ウィーン内にある空間ですが、やはりアシュケナージも英語ですね。。。意外と知られていませんが、ヨーロッパに行くのであればその殆どが英語で物事が済まされてしまいます。特に北西のドイツ・オランダは、その殆どの人が英語に堪能なのでそれぞれの国の言葉を勉強するよりも、圧倒的に英語が有利に働きます。

次回は、ピアノのレコーディングにも参加させてもらう約束をしました。

自らの使用マイクについて、熱心に説明してくれるゲオルグ


彼の音楽にかける情熱は素晴らしく、こうした時間を共にできるのは非常に大きな喜びでした。彼は熱心にサウンド・エンジニアリングのコミュニティでも発言しており、自らの仕事を独り占めしない広い心は、更に人々からの支持を集めるであろうことを感じさせてくれました。

彼が自らのホビー(趣味)だと言って見せてくれた、モデファイされたマイクロフォンです。ぱっと見はNeumann49にも見えますが、中身はOmniのみの無指向性で如何に周波数特性を上手く録るかを語ってくれました。

明日使用するという、ベーゼンドルファーのピアノを触らせてくれましたが、日本での印象とは全く違うピアノでした。元々はブレンデルが所有していたピアノとのことでしたが、こういう超一流の場所でのピアノというのは、日本人が殆ど入り込むことが出来ないゆえに、音色を感じることが出来たのは貴重な経験となりました。

僕が座っていた椅子には、カーフマンが休憩をとったりしていました。

これで、今回のヨーロッパにおける活動は終わりです。それにしても物凄い勢いで走り回りました。時速200km超えでアウトバーンを移動したメルセデスは、2000kmを走破しその役割を十二分に果たしてくれました。この期間は初夏の日差しあり、季節の変わり目ならではの冷たい雨もあり、そしてアウトバーンで遭遇したとてつもない土砂降りもありました。

オランダでは100kmに及ぶ渋滞を見たり、テキサスよりも遥かに広い景色のなか、アメリカよりも全然広い高速道路を走りました。ベルギーでは地元のパン屋さんで本場のワッフルを食べ、英語が全く通じないフランス語圏ならではの雰囲気を楽しみました。食べ物は非常においしく、何処へ行ってもナチュラルで素晴らしい環境に恵まれました。

ヨーロッパで、外国人など滅多に来ないであろう地域を渡り歩き、その地域ならではの素晴らしい人々と触れ合い音楽の素晴らしさを再認識しました。そして起点としていたデュッセルドルフに、スタジオを作ることを改めて現実的な目標として掲げることが出来、今のこの素晴らしい関係性を永遠のものとできるよう、さらに努力していきたいと思いました。

ウィーンのケーキ屋さんにて


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