STEINWAY in Austriaにて
再度デュッセルドルフから朝一の飛行機で飛んで、オーストリアにきました。もちろんEU内なので、パスポートなどのチェックは一切ありません。この日は、マスタリングエンジニアの仲間で、ピアニストとして STEINWAY in Austriaに勤務するハロルドと待ち合わせをしています。この旅のほとんどは、初顔合わせの人ばかりなのですが、流石欧米のハイソサエティたちが集うスタジオワークの世界は、誰一人としていい加減な人はいませんでした。ハロルドは、僕たちが朝食を済ませる時間を見越して30分以上遅く待ち合わせをしていましたが、飛行機の便名通りの時間に迎えに来てくれていました。つまり、約束時間よりも相当に早く迎えに来てくれていました。先の初回の通り、ハロルドはかなり分厚いプロフィールの持ち主です。ウィーンの国立音楽大学を卒業して、国立歌劇場や学友協会で伴奏ピアニストを務めた後、アメリカでオーディオエンジニアの学校に行きます。その後シンガポールに拠点を移して、マスタリングエンジニアとしてのキャリアを本格化させます。再度オーストリアに戻って、マスタリングエンジニアとして活動するとともに、STEINWAY in Austriaにてコーディネーターとしてもお手伝いをしているとのことです。幼少期は、ウィーン少年合唱団に入っていたとのことで、日本と土壌が全く違うことがお分かりいただけるかと思います。
ウィーンの街中は本当に華やかでした。日曜日ということもあり、何もかもが華やいでおり観光客もいっぱいでした。
日曜日は休みとのことでしたが、特別にお店を開けてくれました。様々にピアノを確認させてもらいましたが、やはり日本のスタインウェイとは全く音色が異なります。加えて、ウーヴェのスタンウェイともまた違いますが、シルキーで濃厚である音色には変わりありません。ピアノテクニシャン別にピアノが紹介されており、やはり何と言っても素晴らしかったのが学友協会の洗足調律師、フレッドマンが調整したピアノが最も美しい音を放っていると感じさせられました。彼は元カーネギーホールの専属でもあり、世界の一流どころで仕事をこなしてきているとのことです。また、ハロルドの提案で、フレッドマンを日本に招聘しないかという提案も受けました。
これは今まで考えてきた、グローバル化という視点からして素晴らしい提案で、学友協会とカーネギーホールの専属ということになれば、恐らくは世界で最も高名な調律師の一人ということになるでしょう。これを国内に紹介できるということは、これまで欧米のサウンドを実現できなかった国内のスタインウェイに対して、違った側面からのアプローチを可能とします。
そして美しい街中をハロルドと歩きながら、仕事の話をしていると、
『できれば、Hiroのスタジオに入れてもらうことはできないかな?君はずっと憧れだった』
という申し出がハロルドからもたらされました。エンジニアのグローバル化も推進していくことは考えていましたし、メーカーと共にデュッセルドルフにスタジオを作ることも考慮してきましたが、まさかウィーンでこのようなオファーを受けるとは思ってもみませんでした。ここ最近数カ月に一回は、どこかのヨーロッパチャートに参加した楽曲がチャートインしていましたので、彼はずっとそれを見ていてくれたとのことです。日本からヨーロッパの楽曲をマスタリングし、それをヒットチャートへ入れていくという姿は、狭くなった世界をお互いに意識していたでしょうし、そしてリレーションシップを組むところにまで、互いの意識を高めてくれていたということになります。
彼には早速、様々な仕事をお願いしたいと思っています。
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