スタインウェイピアノ

夜は歌の仕事で、千葉のホールに行ってきました。 ここは10年弱出入りのあるホールなので、感慨深くも印象的な場所です。しかし、今期限りで閉鎖されてしまうとのことで、理由としては単純にスポンサー企業がつかないとのことです。逆に言えば、スポンサーが付かなければ成り立たないとも言え、興行なり催し物の収入でホールを維持できないという現実を知ることになるわけで、どんなに立派なホールでも利用者がいなければこういう結末になってしまうは仕方ないのかもしれません。 芸術文化の保護という観点は確かに必要な要素かもしれませんが、それと同じくらいに重要と言えるのは数字だと常々思っています。プロデューサーであれば、兎に角全体像を把握しなければならず、また音楽という芸術面と、セールスというビジネス面を共存させなくてはなりませんから、良いものであればどういう形で世の中に出すのかを考え、そして数字につなげていく努力を施します。ただこれは理想論、勿論失敗もしますし思い通りに行かないことは頻繁です。 ホールにしても、中々黒字化させるのが容易では無いのでしょう・・・スタッフの方にお話を伺った折、毎年の赤字額がとてつもなかった・・・ 非常に寂しい限りです。


ここ最近かながわアートホールでのレコーディングを企画することが多く、このミュージックビデオを思い出しました。美大生にカメラワークを頼み、様々な若い斬新なアイディアを出してもらい、この映像が出来上がりました。僕は圧倒的にグランドピアノのレコーディングが得意で、初めてプロデュースしたのも、ミュージックビデオを制作したのもピアノ曲で、結局全ての面においてピアノを弾く以外のことは、一通りこなすことが出来るがゆえに、レコーディングされる音源もピアノが得意ということなのかと思います。 ただし、この頃のマイキングといい、全体の雰囲といい、何とも青い雰囲気を自らに感じます。今では絶対にやらないであろうマイキングを用いて、何とか良い音色を録ろうとしていることがわかりますが、Earthworksがピアノマイクを出してきたことで、全て解決してしまいましたし、アンビエンスのマイクも、今では「これ」というものを見つけて、豊かな響きを捕らえることが出来るようになっています。そもそも、ちょっとマイク本数が無駄に多すぎるかな・・・とも思います(笑)。 かすかな記憶では、Recした全てのマイク音源を使用したわけではなく、その中から厳選したはずです。ある意味、試行錯誤をしていた時期ではあるのですが、明確に 「自分はこういう音を録りたい」 というビジョンだけは持ち合わせていたかと思います。何をやるにも、ビジョンは最も大切で、根幹となるレコーディングされた音源に対し、アコースティック楽器の中でも大様と言えるピアノを、最初に1つの指標に出来たことが、今日の仕事に繋がっているようにも思えます。


本国からのエンドースメント契約を行っているSPL社が、NAMM SHOWで新製品を発表しました。正に新世代の機材に相応しいラインナップで、マスタリング・コンソールを中心に、秋には新たなAD/DAコンバーターを発表することも動画に組み込まれています。 この動画は、昨年の冬の始まりにSPL社を訪れたときに、プロダクトマネージャーであるSascha Flokenから見せてもらっており、プロトタイプの機材を目の前に「NAMMSHOWで、今後のSPLを占う機材たちが発表されるよ」との話を聞いていました。恐らくSPL社は、120vテクノロジーで機材を発表したあたりから、本格的に世界のマスタリングスタジオを制覇する考えを持っており、事実日本では殆ど知られていないメーカーでありながら、世界ではKINGとしての風格と立ち位置を手に入れつつあります。そして、SPLに追いつこうとするメーカーも今のところ見当たる感はなく、時間とともに間違いなく不動の地位を手に入れることと思います。 また、機材の考え方やその哲学のみならず、音そのものは正に新世代を代表するサウンドメイキングを行っており、今のところ知る限りではSPLの作り出す音に追い付くメーカーは思い当たりません。これらの背景から、気難しく伝統を重んじ、尚且つ世界をリードすることを大前提とする中央ヨーロッパでは絶大な人気を誇っており、アメリカでも一定水準のエンジニアたちが導入を始めています。 しかしなぜ、日本はこうした動きに対して敏感でないのか、少し理解に困るところがあるのですが、やはりどうしても英語という壁があるのかもしれません。しかし、英語が堪能と言われるドイツ人も、空港でもそこまで上手というイメージはありませんし、ホテルでも一部の人、町中では半数くらいの人が若干の英語を話せる程度という感じです。彼らは確かに言葉が似通っているので、覚えやすいのかもしれませんが、それでも以上記の程度です。勿論英語を嫌う人もいますし、避ける人もヨーロッパにいるのは確かです。しかし、ヨーロッパ人同士が話す場合、例えばドイツ人とポーランド人、ドイツ人とフランス人といった隣国同士の会話でも、英語が共通語として用いられています。なので、世界の音楽事情、スタジオ事情を知るにはどうしても英語が必須となり、僕の知るヨーロッパ人は皆、英語に対して非常に重要性を持ってして向かい合っています。 少し英語の話に寄り過ぎてしまいましたが、是非世界の動向とともに、世界の音の動向も皆様に知っていただくと良いかと感じています。全く水準が異なりますし、グローバルは更には世界の中心と言える場所では、全く次元の違う音を作り上げています。

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